はじめに
本作は、ミュージカル『Cabaret』を題材にしたパロディ小説です。
もしもエドワードさんがロケットの研究をしていなかったら、ハイデリヒとトランシルヴァニアでもミュンヘンでも出会うことがなかったら、ハイデリヒがパトロンを得られず研究を諦めざるをえなかったら……という妄想です。
設定が特殊なため、はじめに以下の注意事項をご覧ください。
・エドワードさんが先天性の女の子です
・舞台は1923年のミュンヘンではなく1929年末から1930年頭のベルリンです
・エドワードさんは25歳、ハイデリヒは24歳です
・エドワードさんがいかがわしい職業に就いています
・エドワードさんが分離不安症気味でやさぐれているのでかなり精神不安定です
・直接的な描写はありませんが、エドワードさんがモブに強姦されたと言及するシーンがあります
・劇中のモブの名前は皆『Cabaret』の登場人物から取っています
・『Cabaret』のパロディではありますが、あくまでも設定を借りただけで、主題などは異なっています
時代背景
第1次世界大戦に敗れたドイツでは、巨額の賠償金を支払うために政府が大量の紙幣を発行したことなどが原因で、1920年代にハイパーインフレが起こりました。
ピーク時の1923年には物価が1兆倍にも跳ね上がり、人々は日々の生活も立ち行かなくなるほど困窮していたそうです。
貧困により、ドイツ(当時はワイマール共和国)の首都ベルリンでは、売春やドラッグが横行し、またいかがわしいキャバレーやナイトクラブが流行り、退廃的な大衆文化が花開きました。
皮肉なことに、敗戦と貧困によって芸術が栄え、ベルリンは世界きっての芸術の都と化したのです。
そんななか、1929年の世界大恐慌が起こり、ドイツ内の失業者は以前の300万人から600万人までに跳ね上がり、人々が仕事を求めて職業安定所に列を成すような状況が続いていました。
民衆の不満が膨らむなか、主に大資本家たちや中産階級からの支持を得て勢力を拡大していたのがナチスでした。
1933年にはヒトラーが首相に就任し、その後政治を率いていくこととなります。
この物語はその3年前、ナチスの足音がひたひたと聞こえ始めたころが舞台です。
ご理解いただけるようでしたら、本編へとお進みください。
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